賃貸で借主に畳張替え義務があるケースとは?特約などにも注意

公開日:2023/08/15   最終更新日:2023/09/19

アパートなどの賃貸物件で借主が部屋を汚してしまった場合、退去時の原状回復は誰が費用を負担するのでしょうか?今回は賃貸物件に和室があるケースにフォーカスして、畳の張り替え費用を誰が負担するのか、借主負担となるケースにはどのような例があるのかを解説します。賃貸アパートに和室がある人は、ぜひ参考にしてみてください。

賃貸の場合は原則貸主が畳を張り替える

賃貸借契約における畳張り替えは、基本的には貸主が行うこととなります。

原状回復義務の概要

賃貸借契約における原状回復義務とは、賃借人が退去時に原状回復のための費用を負担し、入居前と同じ状態に戻して賃貸人に返還しなければならないというものです。

簡単にいうと、アパートなどを借りていた借主は、自身の入居期間についたキズや汚れを自己負担にてきれいにしてから退去しなければならないということを表します。

経年劣化や通常損耗は原状回復義務の範囲外

アパートを借りて生活する場合、定期的な清掃を怠らず、わざと乱暴に扱うようなことをしていなかったとしても、ある程度のキズや汚れはついてしまうものです。

平成17年の判例では、生活する上で予想できる範囲の損耗はや劣化は賃貸借契約において当たり前のものであり、修繕にかかる費用は賃料の中に含まると考えられる、という趣旨の内容が示されています。

つまり、社会通念上通常であると判断できる部屋の使用によりついたキズや汚れは、貸主が費用を負担して原状回復する必要があります。

原状回復義務によって借主が負担しなければならないのは、故意・過失や善管注意義務違反、通常の使用の範囲を超えるような使用によりできた損耗・毀損のみです。

畳の張り替えは貸主負担が原則

借主の退去後に行う畳の張り替えは、基本的には貸主負担にて行います。国土交通省のガイドラインでも、次の入居者を確保するために行うリフォームや修繕は貸主負担にて行うべきであるとされています。

そのため、退去する予定の借主の落ち度で畳を汚したのではなく、経年劣化や通常損耗の範囲であると認められる場合には、貸主負担で張り替えを行うのが通常です。

借主に畳張替え義務があるケース

先述の通り、借主の原状回復義務は、借主の故意・過失や善管注意義務違反が原因となっている場合に適用されます。ここでは、借主に畳の張り替え義務が発生するケースの具体例を紹介します。

借主の不注意などによって畳に汚れが付着した場合の張り替え

借主の故意・過失により畳が汚れた場合は、当然借主の負担にて畳の張り替えが必要です。具体的な例として、畳の上での飲食による食べこぼし・飲みこぼし、タバコの灰による焦げつきなどが挙げられます。

この場合は借主の不注意による汚れであり、経年劣化や通常損耗であるとは認められません。故意でなくとも原状回復義務は適用されるため、畳がある部屋を借りている人は、畳の上での飲酒やタバコを避けるのが無難です。

善管注意義務を怠った場合の張り替え

善管注意義務とは、善良な管理者として通常求められる範囲の注意をしなければならないという趣旨の規定です。賃貸借契約に当てはめると「常識的・善良な借主として必要な範囲の注意をしながら生活する義務」であるといえます。

たとえば、畳の部屋に重量のある家具やベッドをおく場合、畳がへこんでしまうことは誰しもが予想できます。この場合に善良な管理者としての義務を果たすには、家具の脚部分にクッション材を噛ませるなどして畳が傷むのを軽減する必要があるでしょう。

対策を取らずに重量のある家具を置いて畳がへこんでしまった場合には善管注意義務違反に該当し、借主負担にて畳の張り替えをしなければなりません。

畳の張り替え範囲はどこまで?

原状回復義務において畳を張り替える場合は、部屋全面の畳を張り替えなければならないわけではありません。たとえばタバコの焼け跡を作ってしまった場合には、該当する畳を交換すればよいとされています。

つまり、周りの畳も経年劣化により一緒に張り替えるとしても、借主が負担するのは畳1枚分となります。もちろん、食べこぼし・飲みこぼしなどが複数枚に及んで付着している場合には、借主は該当枚数分の張り替え費用を負担しなければなりません。

契約時に特約が付いていないか

賃貸借契約書をよく読むと、原状回復義務に関して特約が付けられているケースもあるでしょう。しかし、たとえば「退去時の原状回復費用は原因を問わずすべて借主が負担する」「経年劣化や通常損耗の回復も借主が負担する」というような一方的な内容の場合、基本的に特約は無効となります。

借主が不利になる特約を有効とするにはさまざまな条件が必要となるため、特約内容に疑問がある場合には専門家に相談してみるのもおすすめです。

まとめ

今回は、賃貸借契約における退去時の原状回復について、畳の張り替え費用の負担者や原状回復義務の詳しい内容、特約の有効性についても詳しく解説しました。

借主が退去する際に畳が毛羽立っている・汚れているなどの理由で張り替えを行う場合、基本的には貸主が費用を負担することになります。ただし、食べこぼしや飲みこぼし、タバコの焼け跡など、借主の不注意や善管注意義務違反が原因で張り替えする際には、借主が張り替え費用を支払う必要があります。

また、借主に不利になる特約はすべてが有効となるわけではないため、疑問に思う場合には不動産会社や法律家に相談してみるのもよいでしょう。賃貸物件の畳を汚してしまった人、退去を控えている人は、今回の記事をぜひ参考にしてください。

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